制御工学分野

制御工学・システム工学の基礎と応用

航空宇宙工学における対象システムの高機能化、複雑化並びに大規模化に対応すべく、制御工学、システム工学の基礎研究並びに応用研究を行っています。

特に、航空機・宇宙機を制御するためのシステム制御理論の基礎研究、人工衛星の制御、大規模システムの信頼性及び安全性を向上させるための解析、評価及び設計に関する方法論の研究、動物の適応的歩行生成メカニズムを利用した惑星探査ローバーや歩行ロボットの開発と制御に重点を置いています。

最近の主な研究テーマ

  1. システム制御理論
  2. 人工衛星の軌道および姿勢制御
  3. システムの信頼性および安全性に対するシステム工学的アプローチ
  4. 統合システム制御モデルに基づくシステム安全設計
  5. 動物の適応的歩行生成メカニズムを利用した惑星探査ローバーや歩行ロボットの開発と制御

教員

藤本 健治 ( Kenji FUJIMOTO )

藤本 健治教授(工学研究科)

研究テーマ

非線形制御・最適制御・確率システム・モデル低次元化・ロボット工学・機械学習など、航空宇宙システムを扱うためのシステム制御理論に関する基礎と応用の研究を行なっています。航空宇宙の大規模システムのための力学的なモデリングと制御手法の開発を目指しています。

連絡先

桂キャンパス C3棟 b3S10室
TEL: 075-383-3791
E-mail: fujimoto@kuaero.kyoto-u.ac.jp

担当科目

学部大学院

制御工学2(3年後期)
航空宇宙工学実験第2 (3年後期)
航空宇宙工学演義 (4年)

動的システム制御論 (前期)
航空宇宙システム制御工学 (後期)
航空宇宙工学特別実験及び演習第一/第二
システム制御工学セミナー (前期)

丸田 一郎(Ichiro MARUTA)

准教授(工学研究科)

研究テーマ

データに基づくダイナミカルシステムのモデリングと制御

連絡先

桂キャンパス C3棟 b3S11室
TEL: 075-383-3792
E-mail: maruta@kuaero.kyoto-u.ac.jp

担当科目

学部大学院

制御工学1 (3年前期)
航空宇宙工学実験第2 (3年後期)
航空宇宙工学演義 (4年)

動的システム制御論 (前期)
航空宇宙工学特別実験及び演習第一/第二
システム制御工学セミナー (前期)

所在地

桂キャンパス (Cクラスター) C3棟 b3S10室
〒615-8540 京都市西京区京都大学桂
京都大学大学院 工学研究科 航空宇宙工学専攻
TEL: 075-383-3791

研究テーマ紹介

システム制御理論

微分方程式、偏微分方程式、確率微分方程式などで表され、時間とともに変動する系を動的システムといいます。動的システムに入力を加え、安定化、目標追従、評価関数の最適化など設定された目的を達成するための設計論がシステム制御理論です。

通常、入力は連続的に変えられると仮定しますが、コンピュータにより動的システムを制御するときは、一定時間ごとに入力を変化させます。このように離散時間処理を伴う制御系をサンプル値系といいます。動的システムに瞬時にインパルスを加えると、状態が不連続的に変化します。このような系は一般にジャンプ系とよばれ、人工衛星の制御系やサンプル値系を表すことができます。サンプル値系やジャンプ系を一定時間ごとに記述する系は、もとの連続時間系に対し離散時間系といいます。

システム制御理論では、種々の系に対する制御系設計論を扱います。特に最近は、サンプル値系の安定化、周期系の出力レギュレーション、離散時間系の最適制御などの研究を行っています。

人工衛星の軌道および姿勢制御

国際宇宙ステーションに代表されるように、軌道上の人工衛星や宇宙ステーションに対する燃料・物資の供給、宇宙構造物の組み立て、検査及び修理などの軌道上サービスが近年重要となっています。それに伴い、軌道上の宇宙機に対するサービス衛星の相対運動の制御、特にエネルギー消費の少ない制御法の構築が望まれています。

人工衛星の相対運動は、ランデブー方程式により記述されますが、そのシステム論的性質に注目し、連続入力およびインパルス入力による相対軌道移行問題の研究を行っています。

人工衛星には、軌道運動のほかに機体の回転を表す姿勢運動があります。姿勢運動は非線形方程式により記述される複雑な運動ですが、人工衛星のミッションにより姿勢や姿勢運動を制御する必要が生じます。ドッキングおよび故障衛星の捕獲などの観点から、姿勢運動の追従制御の研究を行っています。

システムの信頼性および安全性に対するシステム工学的アプローチ

大規模かつ複雑なシステムにいったん事故が発生するとその被害は以前にも増して大きく、システムの信頼性や安全性を確保、改善することがますます重要になっています。

そのためにはシステムの設計、製作、運用と保全、さらに廃棄に至るシステムのライフサイクルを通して、システム工学的なアプローチで信頼性や安全性を管理する必要があります。

安全性・信頼性管理は不確実な情報下における一種の意志決定問題と考えられ、決定結果から生じるリスクが最小となるようにするため、リスク概念に基づく解析や評価方法を検討しています。また、解析者の主観的な判断や知識のみでなく、客観的な情報や知識を用いたシステム解析支援方法を検討しています。

統合システム制御モデルに基づくシステム安全設計

システム安全設計や制御系設計において、最初におこなう対象システムの理解とモデル化が重要です。

大規模なシステムでは機械系、電機系や油圧系などの種々の系が混在して、これらを統一的にモデル化する必要があります。エネルギー流の観点からの物理現象/物理要素の相似則により種々の異なる系を統合的に表現するボンドグラフの考え方を用いて、システムをモデル構築してシステム挙動を解析する研究や故障等の外乱の影響解析方法を開発しています。

また、情報処理技術の進展により、各要素は仕様通り働いて故障しなくても、システム全体としての相互作用の結果として事故になるという新しいタイプの事故が現れています。そこで、事故発生では引金となる要素故障に起因する因果関係より、それらを防御するシステム制御機能の機能不全に着目して全体システムの健全性を解析することが重要と考えられます。システムを安全な状態に維持するための、管理も含めた広い意味でのシステム制御機能に着目した事故原因解析や対策検討に関する研究を行っています。

動物の適応的歩行生成メカニズムを利用した惑星探査ローバーや歩行ロボットの開発と制御

近年、惑星探査が多くの関心を集めています。惑星探査においては、未知環境での高い踏破性を実現する自律性の高い探査ローバーが重要な役割を果たします。

特に、多様な環境下で適応的に移動する機構メカニズムとして、動物のような脚機構が注目を集めています。動物は冗長で複雑な筋骨格系を巧みに且つ協調的に動かすことで、多様な環境の下で適応的な歩行を実現します。このような動物の優れた歩行生成メカニズムを解明し、それを利用することで未知環境での高い踏破性を実現する惑星探査ローバーや歩行ロボットの開発を目指した研究を行っています。

動物の歩行運動は、脳神経系と筋骨格系、そして環境との力学的相互作用によって形成される秩序だった運動であり、この運動制御・情報処理メカニズムを解明することが非常に重要となります。そこで、システム工学的に動物の神経筋骨格モデルを構築し、数値シミュレーションや非線形解析を用いて研究を行っています。また、理論解析や数値解析だけでなく、動物実験データと比較検証することで、より深い考察を行っています。そして、ロボットを作成し、得られた歩行生成原理を用いて制御則を構築して、実験的な検証を行っています。