機能構造力学分野

非線形・微視的動弾性解析と構造システムの高機能化

従来、機械・構造物の強度・剛性設計が主な目的であった固体力学・構造力学の研究分野は、材料の複合化・傾斜組成化による高機能化や、動的環境に適応できるスマート構造システム構築への期待の中で、(1)巨視スケールからマイクロ・ナノを含むマルチスケール解析へ、(2)静的・線形解析から動的・非線形挙動解析へ、(3)力学解析から電磁気・熱・反応現象との連成解析へ、と広がっており、固体・構造の力学的挙動のより精密なモデル化と、機能・信頼性の向上に資する力学学理の構築が求められています。

このような流れを踏まえて、本研究室では、先進複合材料やメタマテリアルをはじめとする、複雑微視構造を有する固体や複雑形状を有する構造の動的かつ非線形な力学的挙動や弾性波伝搬挙動を明らかにするとともに、航空宇宙工学を含む幅広い分野における高機能構造システムの基礎学理を築くための理論的、数値的ならびに実験的研究を行っています。

最近の主な研究テーマ

  • 複合材料構造における超音波伝搬挙動の解明と非破壊特性評価への応用
  • 薄肉構造における弾性波伝搬挙動の解明と構造健全性評価への応用
  • フォノニック結晶・メタマテリアルによる弾性波機能構造の解析
  • 固体材料中の高速き裂進展挙動の数値解析

教員

琵琶 志朗 ( Shiro BIWA )

BiwaPhoto.jpg教授(工学研究科)

研究テーマ

固体微視力学、非線形固体力学をベースに、複雑微視形態・界面を有する固体・構造における弾性波(超音波)伝搬挙動の解析や非線形超音波特性に着目した材料特性・構造健全性の非破壊評価に関する研究を進めています。

連絡先

〒615-8540 京都市西京区京都大学桂
(桂キャンパス Cクラスター) C3棟 c3S01室
TEL: 075-383-3796
E-mail: biwa (at) kuaero.kyoto-u.ac.jp

担当科目

学部 大学院

材料力学2(2年後期)
固体力学(3年前期)
航空宇宙工学演義(4年)

動的固体力学(後期)

航空宇宙工学特別実験及び演習第一/第二

機能構造力学セミナー(後期,博士後期) 

石井陽介.png井 陽介( Yosuke ISHII )

助教(工学研究科)

研究テーマ

固体中の非線形弾性波伝搬挙動の解明、そしてそれらを用いた構造材料の非破壊評価法の確立を目的とした研究を行っています。また、固体中の高速き裂進展メカニズム解明のための数値的研究も行っています。

連絡先

〒615-8540 京都市西京区京都大学桂
(桂キャンパス Cクラスター) C3棟 c3S02室
TEL: 075-383-3797
E-mail: ishii (at) kuaero.kyoto-u.ac.jp

担当科目

学部 大学院

 航空宇宙工学実験1(3年前期)

動的固体力学(後期)

航空宇宙工学特別実験及び演習第一/第二

所在地

〒615-8540 京都市西京区京都大学桂
(桂キャンパス Cクラスター) C3棟 c3S01室
TEL: 075-383-3796

研究テーマ紹介

複合材料構造における超音波伝搬挙動の解明と非破壊特性評価への応用

航空宇宙分野では軽量かつ高剛性・高強度という特徴を有する炭素繊維強化複合材料の適用が拡がっています。本研究室では、複雑な微視構造や積層形態、巨視的異方性特性を持つ複合材料構造における超音波伝搬挙動を解明し、超音波スペクトロスコピーによる材料特性や微視欠陥の非破壊評価の高度化につなげるための基礎的研究を進めています。また、粒子分散複合材料についても、弾性波伝搬速度や減衰係数を予測可能な微視力学モデルの開発に関する研究を行っています。

fig1
超音波ポーラスキャンによる繊維強化複合材料積層板の異方性弾性特性の測定(左)と複合材料積層構造コーナ部における超音波伝搬挙動の数値シミュレーション(右)

薄肉構造における弾性波伝搬挙動の解明と構造健全性評価への応用

軽量化のために薄肉化された構造では弾性波の伝搬挙動は極めて複雑になり、多モード性(同じ周波数をもつ多くの伝搬形態が存在すること)や分散性(伝搬速度が周波数に依存すること)などの特徴があらわれます。また、超音波非破壊評価の分野では計測信号に含まれる非線形なスペクトル成分(高調波や和・差周波数成分など)に着目した欠陥・損傷の高感度な検出・評価法が関心を集めています。本研究室では各種の薄肉構造における弾性波の線形・非線形伝搬挙動を明らかにし、構造健全性評価への応用を図っています。

Figure2.png
平板を伝わる弾性波(ラム波)の非線形周波数ミキシング(左)とき裂によるラム波散乱(右)の数値解析例

フォノニック結晶・メタマテリアルによる弾性波機能構造の解析

弾性波の波長スケールで特徴的な内部構造を付与した、既存の材料では見られない弾性波伝搬特性を持つ人工的構造(フォノニック結晶、メタマテリアル)が盛んに研究されています。本研究室では、このような構造における弾性波伝搬挙動を明らかにし、目的に応じて操作する可能性を研究しています。特に、さまざまな周期的構造を有する平板構造やラティス構造における弾性波伝搬挙動の特徴(遮断、負屈折、集束など)を理論・数値解析によって調べています。

fig3
フォノニック結晶平板における曲げ波の遮断(多数の散乱体の共振を利用)

固体材料中の高速き裂進展挙動の数値解析

航空宇宙分野では、航空機への鳥衝突や宇宙機へのスペースデブリの衝突などによる構造物の高速破壊が問題になっています。このような現象を正しく理解しより安全な構造物を設計するためには、高速き裂進展挙動の解明が必要不可欠です。本研究室では、フェーズフィールド法を用いた数値解析によって、固体材料中を音速と同程度で高速進展するき裂の進展メカニズムを明らかにするための基礎的研究を行っています。

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高速進展モードIき裂の分岐挙動の数値シミュレーション